これは、見て不快にならないというだけじゃなくて、
プロットというか、人間心理の変化に無理がなくてとても自然でした。

そこが好き。
その点、「マンスフィールド・パーク」は、なんでヒーローがヒロインへと心変わりするのか、全く不明で×。

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ヒロインは愛にみちたそこそこ裕福なジェントリーの生まれ育ちで、人を疑ったり、悪く思ったりと言うことのない、素直な娘。
子沢山の家なので、家では弟妹の面倒をよく見る働き者です。

ヒーローの姉が
「愛し合って結婚できるのは稀よ」というと
ヒロインは
「私の父母はとても愛し合っています。私たちを愛するよりも。そして私たち兄妹のこともとても愛してくれます。小さい頃はそれが当たり前なのだと思ってきました。小説を読んで、そうでない人たちもいるんだなと」

ヒーロー兄妹は、金の亡者の父親の作った冷たい家庭環境の中で育ちました。
裏切り、憎しみ、冷酷さが当たり前の世界で育った彼は
「きみの幸せな少女時代がうらやましい」といいます。
「君の育った町に殺人や略奪はなかったとしても、失恋、裏切り、恨み、恐怖、憎しみ、絶望はあったろう?」

彼女は「さあ知りません。なかったんじゃないかしら」というくらい。

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ヒーローの父はがりがり亡者で、子供達は金持ちとしか結婚させる気はありません。

父自身も金持ちの娘を、あたかも愛しているかのように振る舞って結婚にこぎ着けた。
しかし、花嫁はその後、夫の冷たい心にずっと悩み、苦しんで、寿命を縮め、早死にします。

ヒーローがいうには
「我が家には吸血鬼はいなかったが、精神においては、いたも同然だった。父はその冷酷さで、母の生気を吸い取っていたのだ」

こういう家庭でそだった青年が、幸せその物の、ハンブルな娘をあこがれとともに恋するのは、とてもとても自然で、いわば必然。

だからすごく納得がいくのです。

ああ彼は、暖かさに飢えていたろうな。
そして彼女に太陽の明るさ、暖かさを見ているのだろうなと。

こういう、主要な人物の、主要な心理がじつに異論をはさみようのない説得力で語られるものは、ほんとに好きです。

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そしてもうひとつ。。。。

わたしが気に入ったのは、このヒーローの洞察です。

母は、冷酷な父から生気を吸い取られていた、吸血鬼のように。
それゆえ健康を害し、短命に終わった、と。

私自身の過去を振り返っても、またそのころ聞いたDV被害女性の
告白を思いだしても、この言葉もまた、とっても真実です。

さいわい、私はすんでのところで死病(子宮けい癌)の手から逃れ、
まだ生きています。

生きている、ベアリー生きているだけ、ともいえますが。

ですが一歩間違えば、わたしも夫のふるまいに苦しみながら、命を落としていたでしょう。

経験からも、このヒーローの家がどんなだったか、リアルに想像がつきます。

私にとっては、リアリティありありの物語、でした。。。





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